kajin_yamakou’s poet

忘れちゃいけない事 忘れてしまいたい事 忘れたくない事 あてのない日 寝転がって見た 天井の模様 言い訳に重ねた 意味なんて無かった  あの天井の模様が 今に繋がった そんな事を、決して忘れないよう 大切に書き溜めました

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 世の中が進化していくことは、生活が便利になり、可能性も広がり、魅力的でとても素敵なことで、みな誰もがそれに魅了される。

 だけども、それは残酷な事でもあり、進化によって、便利になって気が付けなくなる事も、反比例して増えてきているのかもしれない。

 

少年時代。時間を持て余し、言い訳ばかりを探して、仲間の部屋に集まり、寝転がって見た天井の模様。当時はそれが邪魔くさくて仕方がなかった。

 

もっと遠くへ。もっと、自分自身、特別な何かを。

 

あてもなく根拠もなく実力も力も自信もないあの頃。

 

無駄にただ、過ぎ去っていく時間に焦りだけを感じていたあの頃。

 

何かを我武者羅に打ち込みたい気持ちと裏腹に、世の中にも自分自身にも唾を吐いていたあの頃。

 

進化とは、到底、似ても似つかないあの事。

 

 今、あの事の時間がとてつもなく大切で重要な時間だったのだと思えて仕方がない。

仲間の言葉。夜の足音。海の波とテトラポット。汚れた制服。母の背中と。父の言葉。

次の日の事を考えずに夜の街をふらつき、そして見た、夜明け前の紫の空。

 

 進化していく事は、素晴らしいことだ。

だけども、今に繋がる長い時間の経緯をたどれば、やはり、どうしようもなかった、あの頃の、仲間の部屋の天井の模様に行きついてしまう。

 

 デジタルとアナログの比較なんて、使い古された例えなど、キーボードを叩けば、たやすく観覧できる。地球の反対側の状況も、たやすく知ることが出来る。

コンビニに行けば、大抵のものは、真夜中にだって手に入れることが出来る。

汗をかかずに、苦労せずに、大抵のことは出来るようになった。

 

 だが、それは手に入れたという事になるのだろうか。創り出したという事になるのだろうか。

今、自分というものは、ここに一人しかいない。その自分しか出来ない、他の人には出来ないことの為に今、自分は動いているのだろうか?リアルな自分とは?

 

そう、考え出した時、やはり、私の頭に浮かぶのは、どうしようもなかったあの頃の、仲間の部屋で寝転がって、いきどうおりに苦しんで見ていた天井の模様に繋がった。

きっと、誰でもそうなのではないのだろうか。

 

今の自分を形成したのは、あの頃の記憶の中にある、形にならない意味の解らない天井の模様の様なものなのではないだろうか。皆、その模様の意味を確かめながら今になったのではないだろうか。

 

そう大切な、掛け替えのない友と共に。

 

それを確かめたくて、私はこの物語を書いた。